この記事では、
・証券口座の開設数の推移やその背景
・証券会社で扱われているサービス
について解説します。
証券口座の開設数の推移
日本国内の直近5年間(2018年〜2022年)の口座開設数の推移は以下のとおりです。
2018年3月末時点では、証券口座の開設数は国内全体で約2,389万件であったものの、2022年3月末時点では約3,049万件と、大幅に増加しています。
大手5社の口座開設数の推移
日本大手証券会社「野村證券」「大和証券」「SMBC日興証券」「みずほ証券」「三菱UFJモルガン・スタンレー証券」は「5大証券」ともよばれ、国内外に拠点を持ち、個人などの小口から大企業など大口の業務までサービスを提供している企業です。
それぞれの証券会社の口座開設数の推移は以下のとおりです。
野村證券
残あり顧客口座数※1 | 新規口座開設数※2 | |
2018年3月末時点 (2017年度) |
5318000 | 231000 |
2019年3月末時点 (2018年度) |
5338000 | 257000 |
2020年3月末時点 (2019年度) |
5319000 | 203000 |
2021年3月末時点 (2020年度) |
5329000 | 203000 |
2022年3月末時点 (2021年度) |
5348000 | 201000 |
(最新)2022年12月末時点 (2022年度) |
5352000 | 144000 |
※1 野村ホールディングス株式会社の各年度末決算説明資料をもとに作成
※2 当該年度始からの通年の新規口座開設数の累計(2022年度は、決算報告が出ている12月末までの累計)を記載
証券会社としては日本最大の規模を誇る野村證券ですが、直近5年間は口座数が頭打ちになっていることが分かります。
また、新規口座開設数についても、多少の増減はあるものの、減少傾向です。
大和証券
残あり顧客口座数※1 | 新規口座開設数※2 | |
2018年3月末時点 (2017年度) |
2989000 | 156000 |
2019年3月末時点 (2018年度) |
3025000 | 170000 |
2020年3月末時点 (2019年度) |
3022000 | 127000 |
2021年3月末時点 (2020年度) |
3034000 | 136000 |
2022年3月末時点 (2021年度) |
3038000 | 131000 |
(最新)2022年12月末時点 (2022年度) |
3042000 | 105000 |
※1 株式会社大和証券グループ本社の各年度末決算説明資料をもとに作成
※2 当該年度始からの通年の新規口座開設数の累計(2022年度は、決算報告が出ている12月末までの累計)を記載
大和証券についても、野村證券と同様に直近5年間の口座数は頭打ちになっています。
新規口座開設数も減少傾向にあります。
SMBC日興証券
総口座数※1 | 新規口座開設数※2 | |
2018年3月末時点 (2017年度) |
3327000 | 132000 |
2019年3月末時点 (2018年度) |
3425000 | 165000 |
2020年3月末時点 (2019年度) |
3453000 | 128000 |
2021年3月末時点 (2020年度) |
3551000 | 182000 |
2022年3月末時点 (2021年度) |
3761000 | 192000 |
(最新)2022年12月末時点 (2022年度) |
3820000 | 126000 |
※1 SMBC日興証券株式会社の各年度末決算説明資料をもとに作成
※2 当該年度始からの通年の新規口座開設数の累計(2022年度は、決算報告が出ている12月末までの累計)を記載
SMBC日興証券については、5大証券の中で唯一、2020年度以降の新規口座開設数が増加しています。
その要因として考えられるのが、以下の2つです。
・三井住友銀行との連携サービス
「バンク&トレード」といい、一度のID・パスワード入力でSMBC日興証券と三井住友銀行の口座間をスムーズに行き来できるサービスです。
このサービスによって、オンライン上の1つの画面でSMBC日興証券と三井住友銀行の口座残高を確認できたり、SMBC日興証券と三井住友銀行間の入出金を即時に行ったりすることができます。
・ポイントサービス
SMBC日興証券では、毎月の取引金額等に応じて、「dポイント」を貯めることができます。
貯めたdポイントを株式投資に利用できるサービス(ポイ株)もあり、投資初心者でも気軽に投資を始めることができます。
三井住友銀行やdポイントとの連携といったサービスを設けたことで、口座数を順調に伸ばしています。
みずほ証券
証券総合口座数※1 | 新規口座開設数※2 | |
2018年3月末時点 (2017年度) |
1740000 | 91000 |
2019年3月末時点 (2018年度) |
1782000 | 100000 |
2020年3月末時点 (2019年度) |
1812000 | 86000 |
2021年3月末時点 (2020年度) |
1838000 | 79000 |
2022年3月末時点 (2021年度) |
1861000 | 69000 |
(最新)2022年12月末時点 (2022年度) |
1805000 | 48000 |
※1 みずほ証券株式会社の各年度末決算説明資料をもとに作成
※2 当該年度始からの通年の新規口座開設数の累計(2022年度は、決算報告が出ている12月末までの累計)を記載
表を見るとわかるとおり、みずほ証券は、口座数、新規口座開設数ともに減少傾向となっています。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券
有残口座数※1 | 新規口座開設数※2 | |
2018年3月末時点 (2017年度) |
1288000 | 55000 |
2019年3月末時点 (2018年度) |
1274000 | 61000 |
2020年3月末時点 (2019年度) |
1245000 | 41000 |
2021年3月末時点 (2020年度) |
1213000 | 76000 |
2022年3月末時点 (2021年度) |
1188000 | 57000 |
(最新)2022年9月末時点 (2022年度) |
1109000 | 24000 |
※1 株式会社三菱UFJフィナンシャル・グループの各年度末決算データブックをもとに作成
※2 当該年度始からの通年の新規口座開設数の累計(2022年度は、決算データブックが出ている9月末までの累計)を記載
三菱UFJモルガン・スタンレー証券も、みずほ証券と同様に口座数、新規口座開設数ともに減少傾向となっています。
「5大証券」は、口座数、新規口座開設数ともに軒並み伸び悩んでいることが分かります。
その背景には、「ネット証券」があります。
ネット証券大手5社
近年は店舗で手続きを行うのではなく、自宅で簡単に口座開設手続きができる「オンライン開設」での口座開設数が伸びてきています。
中でも、店舗を持たずにインターネット上で取引の仲介を行う「ネット証券」で口座開設をする人が増加しています。
ここでは、「5大ネット証券」と言われている「SBI証券」「楽天証券」「auカブコム証券」「松井証券」「マネックス証券」の口座開設数の推移を見ていきましょう。
SBI証券
口座数※1 | 新規口座開設数※2 | |
2018年3月末時点 (2017年度) |
4261410 | 421527 |
2019年3月末時点 (2018年度) |
4630676 | 369266 |
2020年3月末時点 (2019年度) |
5124782 | 494106 |
2021年3月末時点 (2020年度) |
6036230 | 911448 |
2022年3月末時点 (2021年度) |
8453000 | 公表なし |
(最新)2022年12月末時点 (2022年度) |
9544000 |
※1 株式会社SBI証券の各年度末決算短信・決算説明資料をもとに作成
2019年4月末以降はSBIネオモバイル証券の口座数、 2020年10月末以降はSBIネオトレード証券の口座数、2021年8月末以降はFOLIO口座数を含んだ実績
※2 当該年度始からの通年の新規口座開設数の累計を記載
SBI証券は、ネット証券の最大手として、トップを走り続けています。
また、2023年3月1日から三井住友銀行より個人向け総合金融サービス「Olive」の申込受付が開始されました。
これは、「銀行口座」「カード決済」「資産形成・運用」等をアプリ上で管理できるようになるサービスです。
SBI証券の口座も対象となっていることから、今後の口座数の推移に注目が集まっています。
楽天証券
総合口座数※1 | 新規口座開設数※2 | |
2018年3月末時点 (2017年度) |
2610549 | 公表なし |
2018年12月末時点※3 (2018年度) |
3017334 | |
2019年12月末時点 (2019年度) |
3757172 | 749646 |
2020年12月末時点 (2020年度) |
5080140 | 1330000 |
2021年12月末時点 (2021年度) |
7141203 | 2070000 |
(最新)2022年12月末時点 (2022年度) |
8647107 | 1530000 |
※1 楽天証券株式会社の各年度末決算説明会資料をもとに作成
※2 当該年度始からの通年の新規口座開設数の累計(2022年度は、決算報告が出ている12月末までの累計)を記載
※3 2018年度より決算期を12月末に変更
SBI証券とともにネット証券のトップを走る楽天証券についても、口座数が著しく増加していることが分かります。
楽天証券の大きな強みは、楽天が提供する他サービスとの連携活用です。例えば以下のようなサービスがあります。
・楽天のネット通販サイト「楽天市場」でのポイント還元率アップ
楽天証券の口座を保有、取引を行うことによって、「楽天市場」でのポイント還元率がアップする仕組みになっています。
・ポイントサービス
貯まった楽天ポイントは、楽天証券で投資信託などの購入に充てることができます。
・楽天証券アプリ「iSPEED」
楽天証券で口座を開設することによって、楽天証券アプリ「iSPEED」で残高管理をすることが可能です。
加えて、このアプリでは、日本経済新聞社が発行するビジネスデータベースサービス「日経テレコン」を無料で閲覧できることから、社会人にとっては大きなメリットと言えます。
いわゆる「楽天経済圏」と呼ばれる楽天の包括的サービスは、楽天証券が口座数を伸ばしている大きな要因の1つです。
auカブコム証券
総合口座数※1 | 新規口座開設数※2 | |
2018年3月末時点 (2017年度) |
1087327 | 45176 |
2019年3月末時点 (2018年度) |
1118041 | 36687 |
2020年3月末時点 (2019年度) |
1151544 | 39658 |
2021年3月末時点 (2020年度) |
1271897 | 122708 |
2022年3月末時点 (2021年度) |
1408685 | 147789 |
(最新)2023年2月末時点 (2022年度) |
1531073 | 131830 |
※1 auカブコム証券株式会社HP「口座数・約定情報等の推移」の月次データをもとに作成
※2 当該年度始からの通年の新規口座開設数の累計(2022年度は、データが出ている2023年2月末時点までの累計)を記載
auカブコム証券は、KDDIと三菱UFJフィナンシャルグループが運営する証券会社です。
auカブコム証券の特徴として、「プチ株(単元未満株)」の存在があります。
一般的な日本株式は、通常一単元(100株)からしか購入できません。
しかし、auカブコム証券には100株未満でも売買できる「プチ株(単元未満株)」があります。
少額から投資をはじめたい利用者にとっては嬉しい制度です。
加えて、いわゆる「au経済圏」ユーザーにとっては、以下の特典があります。
株式手数料の割引 | au回線の利用者は、auカブコム証券の会員サイトにau IDを登録することで、株式手数料が1%割引されます。 |
ポイントサービス |
au PAYカードを利用して投資信託積立を行うことで、積立金額の1%分のPontaポイントが貯まります。また、貯めたPontaポイントは「プチ株(単元未満株)」の購入に当てることができます。 |
このように「au経済圏」を取り込むことで、順調に口座数を伸ばしています。
松井証券
総口座数※1 | 新規口座開設数※2 | |
2018年3月末時点 (2017年度) |
1136018 | 詳細の公表なし |
2019年3月末時点 (2018年度) |
1184102 | |
2020年3月末時点 (2019年度) |
1237989 | |
2021年3月末時点 (2020年度) |
1328282 | |
2022年3月末時点 (2021年度) |
1392794 | 約75,870 |
(最新)2022年12月末時点 (2022年度) |
1430988 | 約45,900 |
※1 松井証券株式会社の各年度末決算報告資料をもとに作成
※2 3ヶ月ごとの新規口座開設数から集計
ネット証券の中でも、一番古くから取引を開始している松井証券。
松井証券の大きな特徴として、1日50万円以下の取引であれば
- 現物取引
- 制度信用取引
- 無期限信用取引
の手数料が無料であり、投資初心者にも優しい証券口座です。
マネックス証券
総口座数※1 | 新規口座開設数 | |
2018年3月末時点 (2017年度) |
1760805 | 公表なし |
2019年3月末時点 (2018年度) |
1817926 | |
2020年3月末時点 (2019年度) |
1856376 | |
2021年3月末時点 (2020年度) |
1937108 | |
2022年3月末時点 (2021年度) |
2185769 | |
(最新)2023年2月末時点 (2022年度) |
2206453 |
※1 マネックス証券株式会社HPの「口座数等(月次)」をもとに作成
総口座数は、証券口座とFX専用口座の合計マネックス証券についても順調に口座数を増やしています。
マネックス証券についても順調に口座数を増やしています。
その要因としては、以下の2つが挙げられます。
・100株未満でも購入が可能
auカブコム証券と同様に、1株から購入できます。
少額から投資を始めたい人には向いています。
加えて、5大ネット証券としては初めて、単元未満株(100株未満)の取引時の買付手数料を無料にしています。
・商品の取り扱いが豊富
米国株、中国株などの外国株の取扱いが豊富であると同時に、IPO株(新規公開株)の取扱いにも力を入れています。
取り扱っている商品が多いというのは、大きな特徴です。
ここまで「5大ネット証券」の口座数の推移および各社の特徴について見てきました。
ネット証券は、「取引時の手数料割引がある」「少額から投資ができる」メリットがあります。
特に、他のサービスとの連携によってポイントが貯まる制度を設けている証券会社は、大きく口座数の増加しています。
証券口座を開設する際には、自身の生活圏と親和性の高いサービスがあるか等にも着目しながら、証券会社を選ぶことが大切です。
オンライン開設と店舗での開設について
店舗式の証券会社と比べ、ネット専業の証券会社では口座開設数が大きく増加していることが分かりました。その要因として挙げられるのは、「利便性の高さ」です。
具体的には、以下のメリットがあります。
また、近年は若年層を中心に投資への注目が集まっています。
ネットでの手続きに抵抗がない若年層が、積極的にオンラインでの口座開設を行う。
このことも、ネット証券の口座開設数が増加している要因の一つと言えます。
【オンライン開設と店舗での開設】口座開設数の推移
日本国内の直近5年間(2018年〜2022年)のオンラインでの口座開設数の推移は以下のとおりです。
グラフを見ていただくとわかるとおり、ネット証券の口座開設数は年々増加しています。
特に2020年度、2021年度は高い増加率となっていることが分かります。
2020年度は新型コロナウイルス感染症の流行による外出自粛があり、自宅でインターネットを通じて株式を売買しようとする個人投資家が増えたことで、口座開設数が増加したと考えられます。
このことからも、投資に対する国民の考え方が変わっていることが見て取れます。
この流れは今後も継続するでしょう。
以下のグラフは、オンラインで口座開設を行った人の世代別の割合を示しています。
年々30代未満の若者の割合が増加していることが分かります。
若年層の開設数増加には、「老後2,000万円問題」がメディアに取り上げられた点が大きく関わっています。
「老後2,000万円問題」により、若年層を中心に「老後への備え」として株式や投資信託などの有価証券が人気を集めたと言えます。
証券口座の開設数が増加している背景
ここまで証券口座の開設数の推移を見てきましたが、証券口座数は年々増加の一途しています。
ネット証券の台頭により、口座の開設や株式の売買が容易となりました。
一方で、日本は株式や投資信託などの有価証券の保有比率は30%弱と、他の先進国と比較して低くなっています。
国民総資産のうち有価証券の比率が高まると、経済活動を活発化します。
そうした背景から最近は個人がもっと投資をするように政府が働きかけています。
政府が主導する「資産所得倍増プラン」、その中でも柱として示された「NISAの抜本的拡充・恒久化」に色濃く出ています。
政府が主導する「資産所得倍増プラン」とは
2022年11月28日、内閣総理大臣を議長とする「新しい資本主義実現会議」にて決定されました。
これは、日本の家計資産の半数以上を占める現預金を投資に向けさせることで、企業価値の向上、個人の資産所得の拡大を目的としたものです。
この取り組みの一環として、NISAの抜本的改革やiDeCo制度の改革が前面に押し出されています。
現時点で具体的な制度改革が示されたのは新NISA制度です。既存のNISA制度に比べ非課税枠が増加し、投資によるメリットが大きくなりました。
NISAとは
通常、株式や投資信託などの有価証券を売却し利益が出た場合には、利益分に対して約20%の税金が取られますが、NISAであれば、非課税で取引ができる点が最大の魅力です。
新NISAではこの非課税枠が大幅に増加しています。
NISAについては下記記事で解説しているので参考にしてください
まとめ
今回は証券口座の開設数の推移について解説しました
国内全体では証券口座の開設数は年々増加傾向、特にネット証券の口座開設数の伸びが著しいことが分かりネット証券が人気だと分かります。
昔はマイナーだった投資は現在では一般的になっており、NISAなどの優遇税制も充実しています。
興味がある方はぜひ投資を初めて見て下さい。
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